自律とは本来何か
人の自律1とは、一般に、自分のことを自分で考え、自分で決めること、すなわち理性的な自己決定能力として理解されることが多いかもしれません。しかし、生命としての人の自律性は、それだけにとどまりません。
未知のものを感じること。何かをしてみようとすること。探索し、失敗し、もう一度試みること。新しいことを考え、新しい動作を習得し、新しい能力を獲得していくこと。
「一歩、歩いてみたい」
「自分の好きなところへ行きたい」
「自分の意思で、自分の身体を動かしたい」
こうした営みは、いわゆる理性的な意思決定のさらに深いところにある、生命としての根源的な自律性(autonomy)の表れと考えることができます。私たちは、環境を感じ取り、環境に働きかけ、試み、学び、変化していく力の中に、生命体が本来備えている自律性を見ることができるのではないでしょうか。
人は一人で自律するのではない
では、人は本当に、他者の助けを借りずに自律できるのでしょうか。私たちは、生まれた瞬間から他者や環境との関係の中で生きています。乳幼児は、抱かれ、物に触れ、おもちゃで遊び、自分の身体を動かしながら、家族などから語りかけられ、周囲の人の反応を感じ、まねをしながら、自分の身体と外界との関係を学んでいきます。
自己というものは、最初から完成したものとして存在するのではありません。遺伝的・生物学的な基盤の上に、他者、道具、環境と身体との相互関係の中で、時間をかけて形成されていきます。
したがって、自律とは、「誰の助けも借りずに、自分一人ですべてを行うこと」と同じではありません。人は助け合い、補い合い、支え合う存在です。そして同時に、道具によって支えられている存在でもあります。私たちは日常生活の中で、さまざまな機器、情報システム、交通手段、さらにはロボットなどの技術から支援を受けながら生活し、社会を形成しています。
大切なのは、他者や機器に依存していないことでも、支援なしに一人で行動できることでもありません。支援の中にあっても、その人自身が再び世界に働きかけ、世界から何かを感じ取り、自ら試みる主体となれること。そこに、自律性の回復の重要な意味があると私は考えています。
人は道具とともに変化し、成長してきた
人間は、人類学的にみても太古から道具を使ってきました。道具は、単に不足した能力を補うだけのものではありません。
子どもがおもちゃを手にするとき、そのおもちゃは単なる「物」ではありません。触れ、感じ、動かし、失敗し、工夫し、楽しみ、遊ぶことを通して、子どもは自らの身体を認識し、身体の使い方を学び、感覚と運動を統合していきます。こうした経験は、脳・神経系、筋骨格系の成長発達を支え、周囲の世界を理解し、自己を形成していく過程にも深くかかわります。
これは子どもだけの話ではありません。自転車、自動車、楽器、コンピュータ、杖、歩行器など、私たちは大人になってからも道具を使うことによって能力を広げ、環境との関係を変えています。そして、繰り返し道具を使ううちに、それをあたかも自らの身体の一部のように扱えるようになることがあります。道具や機器は、人が外界に適応2し、自らを変化させていく過程で重要な役割を果たしてきたのです。
哲学者Andy Clarkが、人間を「生まれながらのサイボーグ」として論じたように、人間という存在を道具やテクノロジーから完全に切り離して考えることはできません。道具や機器を使うことは、人間らしさを失うことではありません。むしろ、道具を身体化・内在化しながら世界を感じ、世界から学び、新しい関係を築いていくことそのものが、人間の営みの一つと考えることができます。
病気の治療の出発点――何を回復するのか
神経変性疾患、神経難病、神経筋疾患、筋疾患、脊髄障害をはじめ、多くの疾患や障害は、それぞれの特徴に応じて身体機能や認知機能を損ないます。
しかし、失われるものは筋力や歩行能力といった個々の機能だけではありません。病気や障害によって行動できる範囲が狭まると、「やってみよう」と思ったことを実際に試す機会そのものが減っていきます。環境へ働きかける機会が少なくなり、新しいものを感じ、触れ、学ぶ機会も失われていきます。その意味で、病気や障害は、その人が本来もっている自律的な適応の機会を制限してしまうことがあります。
治療とは、失われた機能を治したり、外から単純に補うことだけではありません。人間の神経系には可塑性3があります。一方で、生体はすでに成立している神経回路や身体の状態を安定して維持しようとする性質も持っています。したがって、治療の中で、病気や外傷の後に新たな学習を生み出し、神経系、筋骨格系、感覚系が新しい環境に適応していく過程を引き出して行く必要性があります。
その人自身が、もう一度試み、感じ、学び、新しい適応を形成していくことを支えること。私は、そこに治療の重要な出発点があると考えています。
ある意味では、子どもがおもちゃや道具を使い、遊びながら身体と世界との関係を学んできた過程を、成人になってからも、病気や外傷の後にも、もう一度、医学的・体系的に支援していくことだと考えることもできます。治療とは単に「失ったものを元に戻す」だけではなく、その人自身が再び学び、適応していく力を活性化し、新たな身体と環境との関係を形成することを支援する営みと考えられます。
サイバニクスが目指すもの
サイバニクス(Cybernics)を考える前に、ノーバート・ウィーナーが提唱したサイバネティクス(Cybernetics)を振り返ってみます。
サイバネティクス4は、生物と機械に共通する制御と通信の仕組みを体系的に扱う学問として発展しました。「cyber」という語の背景には、ギリシャ語の「舵を取る」「操縦する」という意味があります。そこには、ある目的に向かって、生物あるいは機械が情報を受け取り、行動し、その結果を再び次の行動へ反映していくという考え方があります。
その発展の中で、山海嘉之博士によってサイバニクス(Cybernics)5が提唱されました。サイバニクスとは、人と機器を別々の存在として扱うのではなく、人と機器との相互作用を通じて、脳・神経系、生理系、ロボット・メカトロニクス、情報系などを包括的に捉えようとする学術領域です。
ここでは、その中でも特に医学的治療におけるサイバニクスの意味を考えてみたいと思います。私たちは、難病や重い障害があるからといって、機械が人間に代わって自動的にすべてを行えばよいとは考えていません。山海嘉之博士が発明し、医師主導治験等を通じて臨床開発されたHAL医療用下肢タイプは、その意味を考える一つの代表例です。
人が「動きたい」と思い、歩行動作を試みる。その意思に伴う生体信号を機器が捉え、本人の意図に沿って動作を支援する。その結果、本人の身体で実際の運動が生じ、その感覚が再び本人へ返ってくる。「自分で動かすことができた」という経験が、成功体験となり、さらに次の運動を試みる契機となります。
そこには、人の意思、身体、機器、そして環境の間に相互作用の循環が生まれます。この循環を通じて運動学習を反復することで、脳・神経・筋システムが新しい効率的な運動パターンに適応し、機器を外した後の身体機能の改善につながっていくと考えています。これが、サイバニクスを医学的治療へ導入することの大きな意味です。
複合治療へ
しかし、機器による治療だけで、病気の治療が完結するわけではありません。疾患そのものの原因や病態をコントロールする治療が必要だからです。
近年、薬物療法に加えて、遺伝子治療、細胞療法、超音波・磁気を利用した治療など、多様な新しい治療法が急速に発展しています。疾患の原因や病態機序へ働きかけ、進行を抑制したり、病態そのものを修飾したりする疾患修飾薬治療6の可能性が、大きく広がってきました。
かつて私たちは、進行性疾患の原因を十分にコントロールすることができれば、その後は自然に機能も大きく改善していくのではないかと期待していました。しかし、難病、脊髄損傷、認知症をはじめとする多くの疾患の治療を経験する中で、病態の進行を抑えることと、すでに失われた機能を取り戻すことは、必ずしも同じではないことが明らかになってきました。
疾患原因への治療が成功しても、すでに形成された身体機能や神経回路の変化が、自動的に元の状態へ戻るとことは大変難しいことがわかってきました。そこで私たちは、生物学的治療によって疾患の原因や進行をコントロールすると同時に、サイバニクス治療によって、その人自身の学習、可塑性、適応を引き出し、機能回復を促すという「サイバニクス複合治療」の考え方に至りました。
薬物療法、遺伝子治療、細胞療法、超音波・磁気治療などとサイバニクス治療を、単純に足し合わせればよいということではありません。それぞれの治療がどの時期に、どのような順序で、どのような対象に対して行われれば、互いの効果を最大限に引き出すことができるのか。疾患修飾薬治療によって生まれた新しい可能性を、その人自身の運動、認知、学習、生活の変化へどう結びつくのか。評価分析方法やバイオマーカ評価法の確立などもこれから研究しなければならない重要な課題です。これが、私たちが「サイバニクス複合治療学」と呼ぶ新しい研究領域の中心にあります。
人間の「改良」ではない――サイバニクス複合治療学の課題
私たちが目指しているのは、技術によって人間を際限なく強化し、人間とは異なる存在へ作り変えていく「ポストヒューマニズム(post-humanism)」ではありません。サイバニクス複合治療学は、人間の「改良」を目的とする科学ではありません。一人ひとりの人間は、遺伝的背景を受け継いで生まれ、その時代の社会や環境の中で育ち、それぞれ異なる経験を重ねながら個性を形成していきます。自己の形成とともに、可塑性が抑制され、能力の限界をむかえます。つまり能力的に人は有限な存在なのです。一人ですべてを行うことはできないからこそ、他者と協力し、道具を使い、社会を形成し、知識や文化を次の世代へ継承してきました。そして、一人の人間の人生は一回限りです。
治療の役割とは、その一回限りの人生の旅を支え、病気や障害、そして環境の変化の中にあっても、その人が新しい状況へ適応し、自分自身の人生を続けていくことを助けることではないでしょうか。サイバニクス複合治療等、新しい治療技術について考えるとき、私たちは「何を変えることができるのか」だけでなく、「何をその人自身のものとして守るべきなのか」も同時に考えなければなりません。これもまた、サイバニクス複合治療学が取り組むべき重要な研究課題です。
治療によって人の能力をただ高めていくのではなく、病気や障害によって閉ざされかけた人生を、もう一度その人自身のものとして動かしていく。それは、単に「以前の自分に戻ること」や「正常化(normalization)7」だけを目標とするものではありません。病気や障害とともに生きる中で、新しい自分、新しい身体、そして新しい世界との関係をつくっていくことを支援すること。人間の「適応」と「自律性」を尊重しながら、回復することと変化することの双方を科学的に追究することに、サイバニクス複合治療学の大きな課題と可能性があります。
多くの専門領域の皆様へ
サイバニクス複合治療学は、一つの専門職、一つの医学領域、一つの技術領域だけで完成する学問ではありません。
患者さんの診療に直接かかわる医師、歯科医師、看護師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、臨床心理職、診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士、義肢装具士、管理栄養士、医療ソーシャルワーカーをはじめとする保健医療福祉の専門職。
疾患の原因と新しい治療法を探究する医学、薬学、生命科学、神経科学、再生医療、遺伝子治療、細胞治療などの研究者。
人と機器、人と情報、人と環境との新しい関係を生み出す工学、ロボティクス、メカトロニクス、情報科学、人工知能、データサイエンス、人間工学などの研究者・技術者。
医薬品、医療機器、デジタル医療などを社会へ届ける製薬企業、医療機器企業、バイオテクノロジー企業、情報・デジタル関連企業の研究者、開発者、技術者、臨床開発・薬事・安全管理などに携わる方々。
さらに、人間にとって自律とは何か、身体とは何か、技術とは何か、病気や障害とともに生きるとは何かを問い続ける哲学、倫理学、心理学、社会学、人類学、教育学、経済学、法学など人文・社会科学の研究者。
そして、患者・当事者とそのご家族、支援者を含め、それぞれ異なる立場から「人が病気や障害の中でも自らの人生を生き続けること」を考える多くの方々。
こうした異なる専門性、経験、世界観、価値観が出会い、互いの言葉を学びながら研究し、議論し、実践していく場をつくることが、本学会の役割であるとも考えています。
サイバニクス複合治療学は、まだ完成された学問ではありません。だからこそ、多くの分野の皆様にこの新しい領域へ参加していただき、ともに問いを立て、新しい治療、新しい評価方法、新しい社会との関係を創り出していただきたいと思います。
一人ひとりの人が、病気や障害があっても、自ら世界へ働きかけ、世界から感じ取り、学び、変化しながら、その人自身の人生を歩み続けることのできる世界へ進んでいければと考えています。
皆様とともに、サイバニクス複合治療学を育てていくことを願い、代表理事からのご挨拶といたします。
2026年8月末日 代表理事 中島孝
【用語の解説と参考文献】
- Autonomy(自律)
カント哲学では、理性的存在者が外部から与えられた命令や欲望に従うのではなく、自ら普遍的な道徳法則を立て、それに従うこと、すなわち「自己立法」を自律と捉えます。彼の、Autonomie は、単に「自分の好きなことを自分で決める」という意味ではありません。本稿では、この哲学的概念を踏まえつつ、さらに生命体が環境を感じ、働きかけ、学習し、適応していく能力という広い意味で「自律」という語を用いています。
・カント『道徳形而上学の基礎づけ』大橋容一郎訳、岩波文庫、岩波書店、2024年。
・Kant I. Groundwork of the Metaphysics of Morals. Gregor M, trans.; Timmermann J, rev. ed. Cambridge University Press, 2012. ↩︎ - Adaptation(適応)
適応とは、生体が環境や身体の変化、疾患、障害などに直面したとき、それらに応じて自らの機能や行動、生活のあり方を変化させ、新しい状態の中で生きていく能力を指します。
従来、健康は「病気がないこと」や、身体的・精神的・社会的に良好な状態として捉えられることが多くありました。しかし、慢性疾患や障害とともに長く生きる人が増える中で、健康を固定された理想的状態としてのみ定義することには限界があります。
Huberらは2011年、従来のWHOの健康概念を再検討し、健康を “the ability to adapt and to self manage”、すなわち、身体的、精神的、社会的な課題に直面した際に「適応し、自らを管理する能力」を重視して捉えることを提案しました。
この考え方では、疾患や障害が存在することと、健康であることは必ずしも相互に排他的ではありません。病気そのものを完全に取り除くことができなくても、その人が新しい身体状態や環境を理解し、自らの生活を再構成し、社会との関係を保ちながら生きていくことができれば、そこには新たな意味での健康が成立し得ます。本稿でいう「適応」も、この動的な健康観と深く関係しています。
サイバニクス複合治療学では、治療の目標を単に疾患前の身体や「正常な状態」へ戻すことだけには置きません。疾患原因や病態を治療すると同時に、その人自身が、変化した身体、機器、他者、社会、生活環境との新しい関係を形成し、学習しながら自律的に適応していくことを支援することを重要な治療目標の一つと考えます。
したがって、本稿における「適応」とは、単なる受動的な環境への順応ではなく、人が環境を感じ、自ら働きかけ、試行し、学習しながら、新しい身体と世界との関係を能動的に形成していく過程を意味しています。
・Huber M, Knottnerus JA, Green L, van der Horst H, Jadad AR, Kromhout D, et al. How should we define health? BMJ. 2011;343. doi:10.1136/bmj.d4163. ↩︎ - Neuroplasticity(神経可塑性)
神経系が経験、学習、環境変化、損傷などに応じて、その構造や機能を変化させる性質を指します。William Jamesは19世紀末に神経系のplasticityを論じ、Konorskiは1948年にneural plasticityという概念を提示しました。その後の神経科学により、成人の脳でも経験や訓練に応じた機能的・構造的変化が生じることが明らかになっています。リハビリテーションでは、この可塑性を適切な反復、感覚入力、課題、成功経験などによって引き出すことが機能回復の重要な基盤になります。
・平田 仁『末梢神経外科×神経科学 Brain Science Based Hand Surgery』医学書院、2026。末梢神経障害と脳機能変化、再学習・運動制御を結びつけている点で重要な総説です。
・N. A. Bernstein『デクステリティ 巧みさとその発達』工藤和俊訳、佐々木正人監訳、金子書房、2003。運動を固定的な反射ではなく、環境に適応しながら組織化される行為として捉える上で歴史的に重要な書籍です。
・川平和美・下堂薗恵・野間知一『片麻痺回復のための運動療法―促通反復療法「川平法」の理論と実際』第3版、医学書院、2017。反復・促通を通じた機能回復という臨床的な実践例で、徒手的ですが、サイバニクス治療と同じ背景原理を使っています。 ↩︎ - Cybernetics(サイバネティクス)
Norbert Wienerが体系化した、生物と機械における「制御(control)」と「通信(communication)」を共通の原理から理解しようとする学問です。行動の結果を情報として取り込み、それを次の制御へ返すフィードバックの考え方が中心にあります。1948年の著書 Cybernetics: or Control and Communication in the Animal and the Machine がその出発点となりました。
・ウィーナー N『サイバネティックス―動物と機械における制御と通信』池原止戈夫・彌永昌吉・室賀三郎・戸田巌訳、岩波文庫、岩波書店、2011。
・Wiener N. Cybernetics: Or Control and Communication in the Animal and the Machine. 2nd ed. MIT Press, 1961; reissued 2019. ↩︎ - Cybernics(サイバニクス)
山海嘉之博士が提唱した、人・機械・情報系を融合して捉える学術領域です。サイバネティクスを基盤としながら、脳・神経科学、生理学、ロボティクス、メカトロニクス、情報科学などを包括します。医学領域では、装着型サイボーグHALを用いたcybernic treatmentが臨床応用され、進行性神経筋疾患を対象とした多施設ランダム化比較試験で安全性と検証され日本で医療機器承認されました。
・Sankai Y. Cybernics: Fusion of Human, Machine and Information Systems. Springer, 2014.
・Nakajima T, Sankai Y, Takata S, Kobayashi Y, Ando Y, Nakagawa M, et al. Cybernic treatment with wearable cyborg Hybrid Assistive Limb (HAL) improves ambulatory function in patients with slowly progressive rare neuromuscular diseases: a multicentre, randomised, controlled crossover trial for efficacy and safety (NCY-3001). Orphanet J Rare Dis. 2021;16:304. doi:10.1186/s13023-021-01928-9. ↩︎ - Disease-modifying therapy(疾患修飾治療)
症状を一時的に軽減するだけでなく、疾患の原因や病態機序そのものに働きかけ、疾患の自然経過を変えることを目的とした治療です。近年、SMAに対する核酸医薬nusinersen、低分子スプライシング修飾薬risdiplam、遺伝子治療薬onasemnogene abeparvovec、SOD1-ALSに対する核酸医薬tofersen、Alzheimer病に対する抗アミロイドβ抗体lecanemabおよびdonanemabなど、さまざまな作用機序の疾患修飾治療が実用化されています。本稿では、こうした病態を変える治療と、機能・学習・適応を促す治療をどのように組み合わせるかを、サイバニクス複合治療学の重要な課題として捉えています。 ↩︎ - Normalization(正常化)
医学では、疾患によって変化した身体構造・生理機能・運動機能などを、正常あるいは標準的な状態へ近づけることが、伝統的に治療目標の一つとされてきました。しかし、障害福祉の歴史で発展したnormalization principleは、障害のある人そのものを「正常な人」に変えることだけを意味するのではなく、本来は、社会の中で一般の人々と同様の生活条件、生活リズム、選択、参加の機会を保障することを目指した概念と言えます。本稿ではさらに、治療の目標を単純な「元の状態や元の環境への復帰」に限定せず、病気や障害を経験した後にも、その人が新しい身体・環境との関係を形成し、自律的に適応していくことを重視しています。 ↩︎